好きの感情について

 前回に関連します。

 好きだと思っている対象を並べてみると、同じような「好き」は少ない気がします。

 音楽を例にします。あの曲はメロディが好き、あの曲は進行の文脈が好き、あの曲は歌詞が好き、あの曲は音色が好き......など好きな点で話し始めても種類はたくさんあって、それにひとつの曲でいくつの好きの要素が含まれるかでさらに複雑になる。

 聴き方で考えると、あの曲は何度も聴き返していたい、あの曲は思い出したときに聴いて楽しみたい、あの曲は夏の入りに聴きたい、あの曲はこんな気分のときに聴きたい、など。

 好きの種類を挙げたら、最初は全く好きでなくても徐々に馴染んでゆく、激しく欲してすぐに手放す、日常のなかにゆるやかに組み込まれている、必要というには足りないけれどもなかったら寂しい、好きで好きでたまらない、などどんなふうに好きでいるか説明することもできます。

 

 なにが言いたいかというと、一番好きな曲はなにか、一番好きなミュージシャンは誰か、なんて尋ねられたら答えられないので、最近はこれこれをよく聴いていますとしか言えません。

 同じ質感の曲がないのだから、当然とも言えるかもしれませんが。

 好きの感情といったものを知ることは難しいけれども、好いた対象にどのように働きかけているかは捉えることができるので、とりあえずその話でした。

 

 嫌いについてもそのうち。