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収集癖

 もうひとつ応募してみようと考えて、気持ちを整えるために散歩をしました。だいたいいつも通りの道を歩いて、川の汽水部分の橋で絵をかいているひとを見かけました。絵だという自信はないのですが、A4くらいのノートを片手にしきりに見上げてはペンを動かしている。見ている方向は海の反対で、幅のある川と両岸にある住宅街です。なんとなく僕もそちらの方向が好きで、すこし嬉しかったです。

 

 帰って箱の展開図を染めて、乾かすために日光にさらし、あとは本を読んだりしました。耳鳴りに毎日悩まされていて、音楽を聴くことも楽器を弾くことも避けていたのですが、どうしても弾きたくなってピアノをでたらめに弾いてみました。ところどころいいなあと思ったフレーズもありましたが、でたらめだったので全く憶えておらず、それにいいなあと思ったフレーズがどんな風であったかすらも忘れていて、どことなく寂しさがあります。でもそんな瞬間は確かにあって、メロディだけでなく僕のなかで起こっている思惟や気持ちも、そういった明滅のなかにあると考えたら全てを拾って保存することは不可能でしょう。録音してもきっと聴き返さないし、保存できないものはどうしようもない。消えてしまったものを惜しむ気持ちはこの先もたくさん生まれると思いますが、せめてのつもりで拾った僅かが、なにかしらの形になってくれるよう願います。