ちょっと救われた思い出話

1)寮に住んでいたころ、ある寮生と楽器で遊ぼうと約束していました。彼はディープパープルを筆頭としたハードロックをこよなく愛していて、なにより紳士でした。つい偏屈な言い回しをしてしまうものの、それは優しい人間だからでした。まだ僕がその優しさをまだ知らずにいて、でも仲良くなりたいなと思っていたとき、彼がハモンドオルガンを入手し部屋でかなり弾いているようだったので一緒にセッションしようと持ちかけました。音楽室に向かっていると、別の寮生とすれ違って「あいつ、すげえニヤニヤしながらなんか運んどったわ。俺にぶつかった癖に、なつきさんとセッションするんですって言って謝らへんでさ」

 

2- ⅰ ) ひとり暮らしをしていたころ、日本に遊びに来ていた友人Aが、共通の知り合いふたりB・Cと合わせて四人で僕の部屋で飲み食いしていました。僕が酔いつぶれて目覚めたら三人ともいなくなっていて、ひとり片付けをしていたら不安で不安で、一時間ほど経つと部屋はピカピカになりました。お茶を淹れて眠る準備をしていると、AとBが帰ってきて、Cを送ってきたと聞きました。Cの家がどこか知りませんでしたが、そんなに時間がかかるものだっけと勘ぐりました。

 

3)ゲストハウスで住み込みのアルバイトをしていたころ。相部屋の二段ベッドの上が寝床でした。下の段にはもうひとりスタッフがいて、眠っている間に物を下の段によく落としてしまいました。ある日、壁側に寄せていた物がほとんど全部落ちてしまって、ごめんほんとにごめんと謝っていたら「ナイアガラみたいでびっくりした。最近は何が落ちてくるのか楽しみなんだよね」

 

2- ⅱ ) 僕が大学を辞めて帰郷する前に、Bとふたりで飲んでいると「あのときな、Aのやつ、俺にめっちゃ相談してん。なつきはいまどうしんどいのか、自分はどうしたらいいかって訊かれてもわからへんやん。結局30分くらいなつきの家の周りをくるくる回ってたんやで」

 

 近頃はまた落ちている感覚でいる時間が増えてしまって、こういった助けられたことを思い出しては、やわらかい温度の感触を確かめています。